髑髏の女 I 「先輩、ご卒業おめでとうございます!」 「先輩が卒業するなんて…私寂しいです…」 「ありがとう、これからも時々学園に遊びに来るわ」 あれは 卒業を迎えた日の事だった 我ながら くの一教室の女の子達にはよく好かれたものだ 皆まとめて妹になってほしい位 私も彼女達の事は好きだった くの一の子達と別れた後 私は涙を堪えながら学園の正門を潜った 「…これで 私ももうくの一のたまごは卒業ね」 その時 私の前に一人の女が現れた 気配を感じなかった上に その女は髑髏を抱えている 正直 不気味極まりない 影になっていて 表情はよく判らない 「」 「・・・どうして私の名前を」 女は髑髏を強く抱きしめて 消え入りそうな声でにこう言った 「生路は無限ではなく有限である」 「…え?」 「有限の中から貴方を最善の路に導くのが 私の役目 私の指し示す方向へ 貴方には歩いていただきたい 生路に於いて 数々の選択肢に出くわす 間違った選択肢は身を滅ぼす可能性も無きにしも非ず」 「な…何を言ってるの…?全然意味が解らない…そもそも貴方は誰…?」 「お願い、私は貴方の味方なの」 「だから 貴方は誰!?私を騙したいの?何なのよ気色悪い!」 「…敵じゃないから……私は味方よ……」 突風が吹き が一瞬目を閉じた間に 女の姿は消えていた 「限りのある人生の中から一番良い方向に導く…って事…?あの女が…」 女の姿と発言に 私は不気味さを感じた どうして卒業という晴れの日に 私の前に現れて 意味不明な言葉を並べて勝手に消えるのか 言っている事自体は 私の得になりそうな内容ではあるのだが その女が 一体何を私に伝えたかったのか その時の私には知る由も無かった 「何を一人でぶつぶつ呟いてんだ?」 「おぉ文次郎!今 変な女に会ったんだよ」 「変な女?」 「髑髏抱えて 私は貴方の味方だから〜って何度も言われた」 「……気味が悪いな…知り合いじゃないのか?その女と」 「顔はよく見えなかったの…でもあんな亡霊みたいな人 身に覚えが無い」 空を見上げると 突き抜けるような青色が広がっていた そんな 爽快な空を見ていたら 不気味な体験なんてどうでもよくなってきた 「ねぇ 私達の契り、覚えてるでしょうね?」 「…ああ」 「今までは生徒同士だったから お互い素っ気なくしてたけど」 「卒業して生徒同士ではなく 大人の仲間入りをしたその時から………だろ?」 「・・・あんたみたいな五月蝿い男、この寛大な私くらいしか扱えないわ」 「そっくりそのまま その言葉をお前に返す」 私達は今年の夏 二人だけである約束を交わしていた 「今はまだだ、大人に……卒業してから」 「私もそれが良いと思う、今は授業第一で頑張ろう でも 卒業したら…こんな私を貰ってください」 振り返ってみると この頃の私達はなんとも不思議な関係だったような気がする どちらかが「好きです」と伝える訳でもなく 気づいた時にはお互いがお互いを求めていたんだ 好きです、の過程をすっ飛ばして 卒業したら嫁にしろ、だ もう少し ゆっくりと仲を深めていけばいいものを そうして 卒業してから一年以上が過ぎ 今に至る 私は あの日出会った謎の女の事は 正直忘れかけていた というより 夢と現実がごちゃ混ぜになってしまっていたんだ、そう考える事にしていた なのに何故 今になってはっきりと思い出したのか 生路は無限ではなく有限である 有限の中から貴方を最善の路に導くのが 私の役目 私の指し示す方向へ 貴方には歩いていただきたい 生路に於いて 数々の選択肢に出くわす 間違った選択肢は身を滅ぼす可能性も無きにしも非ず …彼女の言っていた小難しい言葉が 頭の中で繰り返し繰り返し流れていく どうして自分が彼女の言葉を全て暗記していたのか、それも謎だ 「貴方が本当に私を良い方向へと導いてくれるのならば……どうしてあれから姿を見せないの」 NEXT → (09.2.10 色々あります、これから先は) |